持株会のリスクと失敗談

先日、勤務先の株を半分ほど売却しました。

入社してから十数年コツコツと勤務先の持株会制度で毎月購入していたもので、リーマンショックからの数年間もずっと購入していたので平均購入単価は割と低く、昨年までは大きな含み益がのっていました。

しかし昨今のコロナショックで大暴落し、あろうことかほぼ底に近い値で損切りをしてしまいました。その後、昨今(5月25日現在)の自粛解除ムードの中で株価は少しずつ戻してきています。やはりホールドしておけば…などと考えても後の祭り。なぜこのような失敗をしてしまったのか、反省と自戒の意味で振り返ってみたいと思います。

投資に関するルール


まず、私は投資方針で書いている通り基本的にはバイ&ホールドを標榜しています。余程の事が無ければ株・ETF・投信など売却はしません。余程の事というのは、例えば予期せぬ大きな出費がありどうしてもお金が必要になった場合、あるいは保有している個別銘柄に高い確率で倒産が予想される場合などです。

そしてメインの投資対象はインデックス系の投信とETFであり、これらは基本的に倒産で無価値になるという事はありません。倒産リスクのある個別株に関しては1銘柄あたり総資産の2%を購入時の上限にするというルールを定めていました。

このルールを定めた背景には、個別株には常に倒産のリスクがあるため、もし倒産してその銘柄が紙クズになってしまっても資産全体へのダメージを最小限に抑えるという意図があります。投資方針は人それぞれだと思いますが、私はリターンの追求よりもどちらかと言えばリスクを回避しつつ市場平均に追従できるような投資を目標としているため、このようなルールとしていました。

ルールから漏れていた勤務先の株


これまで基本的に、自分で決めたルールの範囲内で投資をしていました。しかし勤務先の株についてだけは唯一、このルールが遵守されていませんでした。今回の失敗の1つ目の原因はここにあったように思います。

勤務先の株はインサイダー取引の制約もあるので、購入は持株会の積立でのみ行い、数単元になったらメインで使っている楽天証券に移管していました。

定期的に資産の管理は行っていたので、勤務先の株がマイルールである「1銘柄で総資産の2%」を超えているという事には数年前から気付いていました。しかし当時は配当も良く株主優待なんかもあったので、売却はせずにそのままホールドしていました。本来の趣旨を忘れてバイ&ホールドという言葉を都合良く解釈していたのです。また持株会では積立額の10%の奨励金が会社から支給されていたので、毎月の積立も継続していました。こちらも奨励金に目が眩んでしまい、買い付け時の上限2%というルールを黙殺していたのです。

奨励金という制度そのものは普通に投資するより有利に購入ができるため、メリットがあります。また基本的に売らずにホールドするという方針も間違ってはいないはずでした。しかしそれは適切なリスク管理を前提としたものだという事を忘れていたのです。持株会の拠出変更などの手続きがネット証券に比べ少しだけ面倒だったという言い訳もありますし、自動積立なので自分でルールを超えて買い付けているという意識が薄かったという言い訳もありますが、とにかくリスク管理が甘かった。

その結果、コロナショックが表面化する前(今年初旬)に所有していた勤務先の株の評価額は約150万円、総資産に対しては4%を超える水準になっていました。マイルールの実に2倍です。それでも危機感は全く無く、こうなっても何ら処置を行わなかった怠慢が今回の敗因の1つと言えます。

コロナショックで大暴落


弊社はコロナウイルスの影響をモロに受ける業種だった事もあり、2月にコロナが表面化し始めた時には物凄い勢いで株価が急落していきました。今思えばどうせ売るならこの時点で売っておけば良かったのですが、当時はまだ感染者も少なく、私もいずれ回復するだろうと楽観的でした。

しかしその後、世界中で感染者が急激に増え始め、4月初旬には日本でも緊急事態宣言が出されます。その頃から弊社はお客さんがほぼいなくなり、開店休業状態となりました。細々と営業は続けていたものの、私の部署もほぼ仕事がなくなり休業指示が出されました

このあたりで「株価はいずれ回復する」と思っていた私は「これはもしかしたら本当に倒産するかもしれない」と思い始めるようになりました。

私は「世界経済は長期で見れば右肩上がり」信者なのでこの頃も倒産リスクの無い投信やETFはマイルールに従ってバシバシと買い増していましたし、個別株でも倒産リスクが低く不当に株価が下がっていると思われる銘柄についてはいくつか買っていました。

しかし自分の勤務先の株に関してはマイルールの上限を超えて資金が集中していた事もあり、「最悪このまま会社が倒産した場合は失業し収入が途絶えるかもしれない。リスク分散という意味では自分の勤務先に単純な投資額以上にリスクが集中している」という不安が拭えなくなってきたのです。

正直、少しくらい自分ルールの上限を超えて個別株を持っていてもそれ「だけ」なら大した問題では無いと思っています。しかし勤め先の株の場合、この「株が紙クズになる事」と「収入が途絶える事」がセットで同時に起こる可能性があり、この事がリスクに対する評価を難しくしていました。

最終的に底値に近いところで勤務先の株を半分売り、総資産の2%以下とする事でリスクの低減をはかったつもりだったのですが、この失敗の2つ目の理由はこの「複合リスクの過大評価」だったと思っています。

「収入が途絶える」というのはサラリーマンにとって非常に大きなリスクです。それと同時に持っていた資産が紙クズになってしまうというのは回避したい所であり、せめてどちらか片方だけでも、という心理が働いていたのかもしれません。自分で決めたルールを破っていた、という事に対しても後ろめたい気持ちもありました

しかしルールの上限値を超えていたとはいえ、それなりに分散投資をしていた結果、勤務先の株はたかだか総資産の4%程度でした。収入が途絶える事に比べたら、これを失うダメージは限定的です。

「勤務先が倒産し収入が途絶える事」と「資産として持つ個別銘柄が倒産する事」。この2つのリスクを切り分けて合理的に考えれば、焦って売る必要は無かったかもしれません。にも拘わらず売ってしまったのは、2つのリスクを上手く切り分けずに心理的な不安だけで動いてしまった事にあるとも言えるかもしれません。

まとめ


その後、緊急事態宣言は解除され、弊社の株は急激に値を戻し始めました。現時点では、私はほぼ底で狼狽に近い形で売ってしまった粗忽者です。

もちろんまだコロナウイルスとの戦いは終わっていませんし、たとえコロナウイルスが収束したとしてもその後の株価がどうなっていくのかは分かりません。結果論で言って、もしかしたらやっぱり売っておいて正解だった、という事になる可能性もあります。

しかしどういう結果になったとしても
  • 平時にルールに沿ったリバランスを行っていなかった事
  • 資産のリスクと収入のリスクを切り分けて合理的に考えられなかった事
は事実であり、やはり反省すべき点として振り返っておく必要があると感じました。

同時に「収入」と「資産」両方に関わってくる自分の勤務先の株というのは、リスクの評価がとても難しいなと感じました。持株会には何らかのインセンティブを設けている会社も多く、上手に利用すれば市場で買うより有利になるのですが、適切なリスク評価は常に必要ですね。。。

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