年率7%の複利効果、皮算用はあてになるのか
「米国株は年平均7%で上がっていくから、積み立て〇年後には複利で資産が〇〇円」っていう話、よく出てきますよね。
でも実際には年7%で毎年ずっと上げていく訳ではなく、バブルも暴落もあります。じゃあ実際に積立したらどうなるの?というのが気になったので、計算してみました。
30年間のデータで計算した場合
下のグラフの青線は、1990年1月~2020年4月までの30年間のS&P500のデータです。一方でオレンジ線は、1990年1月と2020年4月の数字が一致するように一定の年率で成長する架空データです。ちなみにこの期間だと、年7.23%になりました。
この実際のデータと架空データそれぞれに月100ドルずつ毎月積み立てた場合の資産を計算してみます。結果は下のグラフのようになりました。
最初のグラフとの違いが分かり辛いかもしれませんが、最初のグラフはS&P500の株価指数そのもので、こちらは積み立てた場合の累計資産です。
資産額は実際のS&P500では約11.5万ドル、架空データでは約13.1万ドルになりました。リーマンショック以降は架空データよりアンダーパフォームしている期間が長く、昨今のコロナショックによる暴落の影響もあって2020年4月時点での資産は架空データの方が1.6万ドルほど大きくなっています。
このグラフを見ると、7.23%で皮算用した場合より少し実際の資産は少なくなるものの、30年間気絶して積立投資しておけば概ね期待通りの結果が得られた、と言えそうです。
20年間のデータで計算した場合
では2000年1月からの20年間のデータではどうでしょうか?次のグラフは期間を変えて、2000年1月~2020年4月の20年間でグラフ化したものです。
この20年間のS&P500の平均成長率を計算すると、年率3.65%でした。30年間の平均よりかなり小さい成長率です。2000年1月はITバブルで株高だった上、今般はコロナショックで株価が下落しています。この期間ではその影響がかなり大きく、その事が低い成長率に現れています。
この事からまず、よく言われる「年率7%」という数字は切り取る期間によってはいかようにも変わる、という事が分かります。投資を始めた時期によっては、20年程度では思ったように株価が上昇しないという事もあるかもしれません。もちろん投資期間が長くなるほど(少なくとも過去に関しては)7%に収束していくと思われます。
先ほどと同様に年率3.65%で成長する架空データをオレンジ線で描いてありますが、特徴としてこの期間で区切った場合は殆どの期間で架空データより実際の株価指数の方が安くなっています。
では、この期間で積み立てた場合の資産額をグラフ化してみます。
今回は架空データ(3.6万ドル)より実際の資産(5.0万ドル)の方が大幅に大きくなり、先ほどの30年間のグラフとは逆の結果になりました。 殆どの期間で架空データよりも安い株価指数で買い続けている訳ですから、当たり前と言えば当たり前の結果ですね。
しかし架空データが年率3.65%というのは、そもそも多くの人の期待値からは外れていると思います。そこで、さらに別の架空データとして「20年間、年率7%」の架空データを作って比較したらどうなるかをグラフにしてみます。
まずは株価データのグラフから。
まずは株価データのグラフから。
2000年1月の株価指数を起点に架空データを年率7%で計算すると、この20年間の実際の平均成長率は年3.65%だったので当然大きく下回る事になります。とても期待通りの株価になったとは言い難い残念な結果ですね。
この7%で成長する架空データと、実際のデータ両方に積み立てた場合の資産額のグラフを描くと下のようになりました。
少し意外な結果になりました。株価の成長率はあんなに下方向に剥離していたのに、資産額は概ね7%の架空データに積み立てた場合に近い額になりました。
これは、この期間の株価が下に凸なグラフになっている(2000年の株価が高く、その後大きく下げてから2020年に向けて再び上がっている)ため、株価の平均上昇率が悪くても途中の期間で割安に積み立てをおこなっていた事が理由のようです。この20年間は一括投資に比べて積み立て投資に有利な値動きだった、とも言えそうですね。
まとめ
- 過去30年間では株価の成長率は約7%となり、定額積立した場合の資産額も概ね期待通りの結果になった
- 切り取る期間によっては、年率の株価指数の成長率は大きく変わる事が分かった
- 過去20年間だと、年率3.65%と期待していたほど株価が上がらなかった
- しかしその場合でも、定額積立をしていれば期待値に近い資産額となった
という事で、いわゆる「年率7%の複利計算」というのはまぁまぁ使えるんじゃないかなと思いました。しかし投資を始めた時期によっては、数十年は思ったほど資産が増えない事もあるかもしれません。
やはり一番大切なのは、思ったほど増えなくても投資をやめてはいけない、という事かもしれませんね。
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