フルインベストと生活防衛資金



ツイッター上でも何度か議論されている話ではありますが、今回はフルインベストと生活防衛資金について私の考察を綴ってみたいと思います。

なお、ここからの話は主にインデックス長期投資の話であって、デイトレードやスイングトレード、タイミング投資の話ではない事をご了承下さい。

また、ここで言うフルインベストとは現金預金などを残さず、余った現金を全て投資する、という意味です。

フルインベストは最も合理的な手法の一つ


まず理論上は、インデックス長期積立投資をする場合、フルインベストするのが最も期待リターンが高いと言って良いと思います。

すなわちフルインベストする事は、最も合理的な選択肢の1つだと思います。

という事で生活防衛資金なんて要らないので、フルインベストしましょう


~終~


…となると、私の投資方針ではなぜ現金を残しているのか、という話ですよね(笑)

期待リターンは高いけど、リスクは?


フルインベストは期待リターンが高く合理的。ではリスク(数学的なリスクではなく現実的な意味で)はどうなのでしょうか?

先般コロナショックがありましたが、日常生活・雇用状況への影響は大きかったものの金融ショックという面で見ると影響は限定的でした。

全世界株の下落が最大3割程度、しかも2ヵ月ほどで既に半値程度は戻ってきています(2020年6月現在)。債券に至ってはほぼ影響は無かったと言えるかもしれません。

ではリーマンショックの時はどうだったでしょうか。

ざっくり言うと、全世界株で約6割の下落。ペースとしては1年半かけてゆっくり底値を目指し、2007年末の高値に戻るのは2013年頭なので、5年ほどかかっています。

さらにこの時は、逆の値動きをすると期待されていた債券も追随して1割程度下落していました。

平行して円高が進み、リーマンショック前の1ドル120円から4年ほどの間に80円を切るところまで下がりました。

日本国債は別として、外国債に投資していた場合は円換算の評価額で3割ほど下落したという事です。

「債券はリスクが小さい」「債券は株と逆の値動きをする」と言われていますが、実際は何が起こるか分からないものです。
(この事はもちろん現金にも言えるので、日本円が絶対安全とも言えません

投資家に追い打ちをかける失業リスク


ここまで、リーマンショック時は株価が6割も下落し、債券も円換算で3割ほど下落、しかも数年に渡ってその状況が続いたという事を見てきました。

しかし所詮は評価損(含み損)。長期投資家としてはいつか上がるまで買い続けながら耐えれば良いだけの話です。

ただしそれは収入が維持できれば、の話。

リーマンショックの時には完全失業率が6%、隠れ失業者を含めると1割近くの方が職を失ったと言われています。

今般のコロナショックに関してはまだ失業率の統計を見ていませんが、一時的な収入減少という観点で見るとリーマンショックより影響は大きかったかもしれません。

もし生活防衛資金が無い状態で収入を失うと、再び収入が得られるようになるまでの間は最悪6割も下落した株を泣く泣く損切りして生活費に充てる事になる訳です。

例えば月の生活費が20万円の場合、毎月30万円ずつ損失確定する事になる訳ですね(買値50万が6割下落 = 売値20万円)

毎月30万円を失っていく事を想像してみて下さい。評価損ではなく確定損です。あなたは耐えられるでしょうか?あるいは大不況でも絶対に失業しない自信があるでしょうか?

この答えがYESでないなら、フルインベストはよく考えてみた方が良いかもしれません。

私は正直、上記のような状態になったらショックで投資をやめてしまうかもしれません。リーマンショックで退場した投資家が多かったのも頷けます。

ポートフォリオに債券を加えればダメージを減らせますが、先ほど書いたとおり外国債は為替の影響を受け3割程度は簡単に下落するので過信は禁物です。

リーマンショックは100年に一度の危機と言われています。しかし来月にも300年に一度の金融危機が来て、最大で8割下落、しかも10年近く戻らない、なんて事も絶対に起こらないとも言えない訳です。

私も長期(20~30年)では株価がプラスに収束すると信じていますが、その間に大暴落が起きたら何が起こるのかをシミュレーションした結果、少し保守的ですが今の方針に落ち着きました。

より現実的なシナリオでは


さて、ここまでは大不況・失業シナリオについて考えてみました。投資は常に最悪の事態を想定すべきですが、実際この状態まで追い込まれるのは稀です。

次はもう少し現実的な事を考えてみます。

お子さんがいるご家庭では、教育費がかかりますよね。学資保険に入ってる方もいると思いますが、コツコツ長期投資で賄おうと考えている方もいると思います。

ところでインデックス投資であっても、タイミングが悪いと損益がプラスに収束してくるのに20年程度かかる事もあります。もし子供の大学入学などのタイミングでそこそこの不況が来ていた場合、大丈夫でしょうか?金額的に足りたとしても、予想外の損切りになってしまう可能性はありませんか?

あるいは、病気や怪我で一時的に離職する可能性もあるでしょう。失業手当もあるし健康保険もありますが、長期療養となると収入が減った状態で医療費もかかります。その時にたまたま株価が下落していたら?

こちらも手厚い保険に入っている方は大丈夫です。リスクに対して保険金で手当をした上でフルインベストするのは一つの手です。

しかし私のように「保険は最低限」という考えで、学資保険も医療保険も生命保険も入っていない方は要注意ですね。

上記のシナリオは「生活が破綻する」というレベルの話ではありませんが、せっかくインデックスで長期投資していたのに損切りする事になってしまう例です。

こういったリスクをどう捉えるかは人それぞれなので、生活が破綻しないレベルなら多少損するリスクがあっても良いよ、という方はそれで良いと思います。

しかし、フルインベストする場合はこの「損切りになっても強制的に売らざるを得ない状況」が起こりえる事は認識しておくべきかと思います。

ビーチ家の場合


ここで我が家の場合を見てみます。夫婦と子供2人の4人家族で、保険は最低限(学資保険・医療保険なし)です。

あと10年ちょっと経つと、子供達は高校やら大学やらでお金がかかる時期になります。

学資保険なし・残り期間10数年という事で、教育費は現金をベースに貯めておいた方が良さそうです。その上で10数年後に投資分がプラスになっていれば、支出した現金とのリバランス売却は行う予定です。

リバランスと言うと堅苦しいですが、儲かっていればある程度の投資資金を利確して、逆に株価が下がっていればほぼ現金で学費を工面するイメージですね。

医療保険にも入っていないので、万一の時は高額療養費の限度額で半年分くらいを目安に考えています。

これらを元に、どれくらいを現金で残しどれくらいを投資に充てるかを決めています。

ちなみに我が家では【教育費貯金】などのようにお金に色をつけた管理はしていません。また、【投資待機資金】と【生活防衛資金】も分けていません。

その代わり上記のように今後どの程度のお金が必要なのかはざっくり計算していて、もし暴落時に追加投資する場合でも最低これくらいは現金で残そう、という目安は持っています。

まとめ


フルインベストは長期インデックス投資においてリターンを考えると合理的な選択だと思います。

実際、フルインベストをしない事による機会損失と、実際に強制損切りに遭うリスクを考えるとフルインベストの方が良いかもしれません。

しかし大不況下で職(収入)を失うリスクについて一度は考えておくべきだと思います。

安定した副業などがあれば、少しリスクは多く取れる(=フルインベスト寄りにできる)かもしれませんね。

あとは自分が多少の損切りは許容できる性格なのか、極力損切りしたくない性格なのかも重要です。

結局のところ、(借金をしていない限りは)最終的には自分のメンタルが損切りに耐えられるのかだと思います。

長期投資は退場せずに続けてこそなので、それぞれの家庭環境や、自身の性格などを見極めた上で、いざという時も退場しない投資をしたいですね!


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